「トリオトランな夜」番外編 ノルウェー大使館にて-その3

ライブハウスH.S.Art店のマスターが、大きな声を張り上げて、村上の紹介をしているようだった。

村上はゆっくりとイントロを奏で始めていた。

「・・・Tommorowだ。」

いつものクラスターはさすがにやらなかったけど、しっとり、と短めに弾いた。

拍手が起こった。

どうも後で聞くところに寄れば、成り行きでそんなことに発展してしまったらしい。

弾き終わってから、大使や大使夫人にあれこれ話し掛けられ、英語のわからない村上は目を白黒させて、

「伊達さ~ん!伊達さ~ん!!」と助けを求めていた。

私たちは、薄情かな、遠巻きにその様子を面白げにながめていたに過ぎないのであった。

だって、こっちも英語わかんないも~ん。

こういうパーティは全く初めてだったので、帰り時のタイミングがわからない。

ぽつぽつと帰り客が出始めたタイミングで、おいとますることにした。

ピアノ演奏のハプニングの後、村上はトリオトランのサックスのトルベンと一緒にソファに座り、 なにやら話し込んでいた。

果たして、会話になっていたのかどうかは怪しいが・・・。

私は、ライブの時撮った写真をフロッピーに入れ、持参していた。

伊達さんに通訳をお願いして、JPEGは開けられるか、チューバのラーシュに聞いてもらった。

大丈夫、というので、安心してフロッピーを3枚渡した。

良い思い出になってもらえばいいのだけど・・・。

帰りに、トリオトランの三人は、「アリガト、アリガト」を連発して一人一人握手してくれた。

良かったー、と思った。

来て、良かった。

大使館を皆と出て、「広尾の夜」を堪能しようと(うそ)近くのカフェに立ち寄った。

さすが広尾、Sun Shipご用達「マクドナルド」は見あたらないのであった・・・。

珈琲を飲みながら、楽しかったね、と話した。

話は、いつまでもつきなかった。

「トルベンと、何話しよったん?」

村上に聞いてみた。

「うん、今度は俺らがノルウェーに行く、って言ったら、オーケー、ってさ」

「そんなこと言えたん?」

「アイ、ゴー、ノルウェー、って言っただけ。」

一同、爆笑・・・・。

まだ肌寒かった5月の風が、心地良い、夜、だった。