トリオトランな夜番外編 「ノルウェー大使館にて。」その1

ノルウェー大使館から、「トリオトラン」の来日に関係した人や、ジャズ関係者を招いて、ミニコンサートを兼ねたビュッフェパーティをやるので、ぜひいらしてください、とご連絡いただいた。

翌日届いたご招待状には、「平服でお越しください」とかかれた文字。

「何着ていく?平服って、汚れてなけりゃ、いいんかいな」と言った私に、「やっぱ、こういうときは、スーツでしょ」と川崎君の判断で、三人はスーツ着用となった。

待ち合わせ場所に、たどり着いたら皆スーツで、打ち合わせどおりだったんだけど、三人とも、パーティなんて、なんか居心地わるそうやなあ、って感じの顔していた。

実は、しぶしぶの参加で、私が最後までせっかくだから、行こう!と押し切っての参加だったのだ。

私は大使館には打ち合わせに一度伺ったことがあるけれど、Sun Shipのメンバーは初めて。徒歩で私が先導して、5分ほどで到着した。

建物に入ると、入り口で担当の伊達さんが迎えてくれた。

「今日はお招き有難うございます。お言葉に甘え、全員でまいりました。」と私が言うと、「ありがとうございます。どうぞ、中へ。」伊達さんは、本当にしとやかな方で、何度も電話するうち、私のほうは「でーー」だの「おおおー」だの、「げええっ」だの、どんどんわけわかんない言葉の連発で話し方が崩れていくのに、全く、初対面の時のままの話し方が崩れない。みごとだ。穏やかな声質で、話のテンポも一定しており、「美しい日本語とは、こういうのを言うんだなあ」といつも感心していた。こういうことに遭遇すると、なぜかふと、おでん鍋の底に崩れかけたジャガイモとすじ肉がぐちゃぐちゃに混ざったのを、うまい、と思いながら食っている自分の姿を思い出しちゃったり、するのだなあ。

「ウエルカム!」なんてでっかい手を出され、顔をあげると、大使なのだろう、奥様らしき女性と二人で、部屋の入り口で一人一人に声をかけ、握手で迎え入れていた。何とか笑顔で答えたものの、すばらしく美しいフローリングの広間にに入った私を迎えたのは、給仕の格好をしたボーイさんで、早速飲み物をお盆(「お盆」はないよね、なんていうんだっけ??)に載せたワインやらオレンジジュースやらを勧めてくれた。

6時に会社を飛び出て、家に帰り、着替えて、ダッシュで家を出て、駅構内の乗り継ぎは走りどおしだったので、喉はからから。オレンジジュースを取り、「サンキュー」とにっこりして見せたのは良かったが、少し遅刻して到着したため、みんなと席に着くなり、大使の挨拶があった。

もちろん英語なのだが、傍で伊達さんがマイクを持ち、通訳しながら挨拶は進んだ。

さすが伊達さん。みじんも上がっているようなそぶりはない。たいしたもんだ。

そこではたと、気が付いた。左手に持った、オレンジジュース。これって、開始までに飲むものだったんじゃないかいな??

周りはだ~れも、グラスを持っている様子が無い。

すぐ飲んじゃえば良かった。

しょうがないから、喉は渇いていたものの飲みそびれて、ずーっとオレンジジュースの入ったグラスを持ったまま過ごす羽目になってしまった。

飲んじゃおうか、飲んじゃおうか、と何度も誘惑にかられながら、私はずっと耐えているのであった。